立春に新たなスピリットが生まれる(令和6年2月)

立春を過ぎて、少しずつ春のぬくもりを感じる日々が増えてきました。
 漢方医学は、陰陽太極論というシステム論によって体系化された医学ですから、冬至の一陽来復で生まれた陽の気が、地上に現れて少しずつ形に現れ始める頃である立春は、人の健康にも大きく影響すると考えています。

 春の陽気を受けて、人の体内で眠っていた陽気が体表に現れて、上に昇っていくので、顔が赤く火照ったり、ニキビが増えたり、頭頸部の炎症が悪化しやすくなります。
 春の花粉症も、眼が赤く腫れたり、鼻がつまったりしやすくなります。つまり春の陽気によって頭頸部がうっ血して、瘀血(オケツ)証になりやすいので、頭痛やめまい、首凝り、肩こりも出やすくなります。
 ですから通常の花粉症の治療に、瘀血を治す治療を加えると、さらに症状が軽くなり、治りやすくなります。
 もともと瘀血体質の人は、瘀血になりやすい食事や生活習慣を持っているので、それを改善しながら、瘀血体質を改善する漢方薬を続けていると、翌年の花粉症が、とても軽くなったり、ニキビやシミ、ソバカスが出にくくなったり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病にもとても良い影響があります。

 春の陽気には良いこともあります。
冬に凝り固まっていた心身をほぐして、血行を良くしたり、沈んでいた気持ちも次第にあたたかく軽やかになって、和(なご)んでいきます。
 春は、人も社会も大自然も動かす原動力となる、陽気を育む季節です。人の顕在意識であるマインド(理性)は、クールで冷たいので、漢方的には陰の気ですが、マインドを動かす気力や情熱であるスピリット(霊性)は、温かく心を和ませ、熱く燃えるので、漢方からみれば陽の気です。スピリット(霊性)が、もともとクールになりやすいマインド(理性)に元気を与え続けています。春には、このスピリットをさらに元気にして、形に現わす力があるのです。

 春の陽気を受けつつ、漢方の補気薬でさらに陰陽の気をバランス良く補うと、気力や情熱、勇猛心だけでなく、理性や知性も安定して落ち着くので、心身が元気になって、何度でも再チャレンジできるようになります。こうやって、何度でも毎年よみがえるスタートを切るのが、2月という立春の季節なのです。春を謳歌してくださいね。