神無月に思う(令和2年10月)

 日本では10月を神無月と呼びますが、日本は古来から「人は祖に基づき、祖は神に基づく」と言われてきました。つまり人は先祖から生まれ、先祖の基をたどると神様だったという神道観があり、八百万の神々が幸う国で、神様は、人やご先祖を産んだ御親神という、家族のような親しい間柄で、様々な四季折々の祭などによって、神と人が共存共栄してきたのです。
 10月は、その神々が一堂に会して、人々の今年の精進努力を評価してくださり、来年の幸せを話し合って下さる月だそうです。

 日本人は、昔から「誰も見ていなくても、いつも、お天とう様が見ているからね。悪いことはしちゃだめだよ」と「天」の存在を常に意識してきました。
 良いことがあれば、天の助けと感謝して、春夏秋冬、神の恵みに感謝するお祭りが大好きな国民ですし、悪いことがあれば、天が与えて下さった試練だと、謙虚に受けとめる国民性があります。
 自分に実力が無いから、天が自分に実力を与えるために、親心から与えてくれた試練だと受け取って、努力を惜しまず、苦難を超えてきた歴史があります。
 働くことは、はた(人々や社会や神々)を楽にすることで、他人の幸せを我が事のように喜び、労働を苦と思わない考え方で、明るく、大らかで、やさしい国民性が育ちました。

 さらに、日本の気候風土は、夏は亜熱帯、冬は地面が凍りつくツンドラのように目まぐるしく変化します。毎年、台風が来て、地震や火山噴火が時々起きては繰り返すという、大変な自然環境があるので、善悪をハッキリ言わず、白黒つけない玉虫色という価値観が育ち、バランス感覚に長けた、とても思いやりの深い国民性が育ちました。
  神道の中心たる天皇陛下を筆頭にして、日本の社会全体がお互いを家族のように思いやる惻隠の情と卑怯を憎む武士道精神が育ちました。

 日本は、第二次世界大戦後に、神道の伝統と価値観を否定し、天の存在を意識しなくなり、自由と平等の価値観を取り入れました。
  各々に問題があり、様々な異論はあるでしょうが、自由と言いながら、自分勝手な個人主義が蔓延して惻隠の情がすたれ、自分を律する天の存在を忘れて謙虚さを失い、小児では虐待が増え、社会全体に愛情が不足して、ストレスフルに育った人々に、うつ病が広がり、自殺者も増えています。
 ストレスフルな環境要因によって、エピジェネティックスによる遺伝子のメチル化が促進され、脳の遺伝子の働きを抑えて機能低下を起こし、脳が明るく、楽しく、温かく、軽やかに機能できない状況が、見え隠れしています。

 漢方薬には、人の「気」に働いて、疲れを癒し、情熱や、やる気、元気、スピリットを強めてくれる生薬が多く使われています。
 今年を総決算して、来年に向けた幸せを、神々とともに求め、その為の気力、体力、情熱を、漢方薬で補い高める工夫を考える月にしてみてはいかがでしょうか。 少しでも体調不良があれば、気軽にご相談くださいね。