コロナウイルス治療の常識と非常識、初期治療には漢方を!
ニューヨークでCOVID-19感染を経験した医師の詳細な経過報告が、日経メディカルに紹介され、様々な医療情報が出てきました。
感染初期の症状と、治療の常識と思われている非常識について、漢方治療の観点から、当院の考え方を含めて、まとめてみました。少し長いですが、最後まで読んで下さいね。
潜伏期と初期症状:
感染から約5日間(最長14日)の潜伏期を経て、感冒様症状(発熱、咽頭痛、鼻汁など)と強い倦怠感が出て、熱や倦怠感が数日続いて咳が出てくる人や、熱がさほど高くないのに倦怠感が強いこともあるそうです。
通常の感冒では4日くらいで解熱して治りますが、4日目にも症状が続いている場合は要注意です。
経過:
症状が7日間前後続いた後に、約8割は自然軽快して治ります。残りの約2割は肺炎を合併しますが、始めは倦怠感と息苦しさだけで、咳がひどくない肺炎もあるようです。肺炎を発症して数日すると痰がいっぱい出てきて激しい咳が出たり、気道が詰まって苦しくなり重症化する場合と、そこから自然軽快する場合があるそうです。
普通の感冒で肺炎に至ることは、とても稀です。このウイルスの特徴として、感染当初から肺胞親和性が高いために、炎症の主体が咽や気管でなく、始めから肺胞が冒されるので、咳の出ない肺炎になるのだろうと理解されています。
予後と漢方的予防:
重症化して死に至る致命率は、80歳以上の高齢者15%、循環器疾患10%、糖尿病7%、慢性呼吸器疾患6.5%、高血圧6%、悪性腫瘍の治療中:5.6%、健康成人0.9%という報告があります。
漢方的には、舌に膩苔という厚い苔のある人と瘀血(血液ドロドロ状態)の人は重症化しやすいとのことです。厚い膩苔があると「気血水」が滞りやすい「痰飲」の状態とで、痰が詰まりやすくなります。食生活習慣と漢方薬の工夫で痰飲状態を解消できます。瘀血は高血圧の人に多いので、当院では駆瘀血作用のある漢方薬を高血圧の人に出しています。
初期感染の免疫力を高めて、自然治癒力を高める、補剤と呼ばれる漢方処方群があり、日頃から疲れやすかったり、食後の眠気が強い人にお勧めです。
初期治療:
常識の非常識① 漢方なら自宅待機する必要がありません:感冒様症状で発症する2日前から感染力があるのと、発症した初日では普通感冒と区別できないことから、国は、発症早期の受診を控えて自宅療養するようにとの指示を出しています。
この自宅待機の常識は漢方的には非常識なのです。急性熱性疾患の治療を述べた「傷寒論」には、逆に様子を見ずに、できるだけ早期に、未病(発病前)のうちに、治療を開始することが大切だと書かれています。
その根拠が、最近になって実験レベルで科学的に証明されました。炎症性サイトカインストーム抑制作用(熱を出せ、炎症を起こせという命令物質の作用を抑える力)が葛根湯で示され、オートファジー(細胞内異物除去・リサイクルシステム)活性化作用により、数百万個に増えたウイルス量を一晩で数十個に減らせるという実験データが、麻黄湯で示されています。 https://www.tsuchiura-east-clinic.jp/2818.html
常識の非常識② 漢方なら鎮痛解熱剤は不要です:普通感冒では、解熱剤を使用すると治りが遅くなることが実証されているので、感冒を多くみる小児科医は、ほとんど解熱剤を出さなくなりました。ところが、今回の新型コロナウイルスでは、解熱剤と、必要に応じて酸素投与が行われます。解熱剤を多用すると免疫力が落ちるので、治りが遅くなる可能性があります。
漢方薬には「熱を出せ、炎症を起こせ」という命令である炎症性サイトカインを正常化させる作用があります。鎮痛解熱剤は、熱産生だけをブロックして、炎症性サイトカインを抑制できないので、一時的に解熱しても、薬が切れるとすぐに熱が戻ってしまいます。
漢方を早期から飲むだけで、高熱の出やすいインフルエンザでも一晩で解熱し、節々の痛みがすぐにとれて、ウイルスも一晩で数が減るので、そのまま快方に向かうことが多いのです。
常識の非常識③ 漢方なら軽症肺炎にも対応可能です:軽症のウイルス肺炎は必要に応じて酸素投与しながら改善するのを待つのが主な治療です。最近は、入院すればレムデシビルやアビガンなど、インフルエンザのように抗ウイルス薬を用いて、ウイルスの増殖を抑える治療も併用しています。
漢方薬には、感染初期からオートファジー機能を高めて、細胞内のウイルスそのものを消化分解してしまうので、抗ウイルス薬と併用できます。副作用が少ないので妊婦さんにも使用できます。さらに、肺胞内に溢れた痰を排除する作用、つまり 「痰飲の毒」を除く作用が高い漢方薬を用いれば、早い回復が期待できることが、中国から報告されています。
ただ、漢方だけに頼るのは危険です。急に悪化する可能性があるので、肺炎の徴候が少しでもあれば、病院を受診して西洋医学的対応の補助として、漢方薬も併用することをが良いことは、武漢のレポートにもあるとおりです。
初期治療には漢方を!
強い倦怠感や熱感を急に感じたら、お熱が出る前かもしれません。漢方的な診察をすれば、すでにこの時点で「浮脈、数脈」になっている事が多いので、熱が出てくる可能性が高いかどうか漢方的な判断が可能です。早期に漢方治療を開始することができれば、それだけ、ウイルス量が増える前に、減少させることができ、炎症性サイトカインによる筋関節痛や発熱も鎮めることができるので、軽い感冒様症状のうちに治癒させられる可能性が高まるのです。