高血圧基準が2024年4月から変わった? 変わらない当院治療方針の理由

高血圧症という病気の診断基準は全く変わっていません。以下の厚労省の表1の通り、収縮期:140mmHg以上/拡張期:90mmHg以上が診断基準です。高血圧症は、その程度によってⅠ度からIII度までの分類があります。

表1 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

全国健康保険協会(協会けんぽ)が、従来から行っていた「未治療者の方への受診勧奨(重症化予防事業)」の勧奨基準が、「収縮期:140mmHg以上/拡張期:90mmHg以上」Ⅰ度高血圧の基準から、2024年(令和6年)4月から「収縮期:160以上/拡張期:100以上」II度高血圧の基準に変更になっただけです(下の表2)。
 この表2からわかることは、血圧だけでなく血糖も脂質も病気の診断基準そのものに変更されています。今までは、「病気の兆しが出ていて、このまま放置すると病気になりますよ」という勧奨基準から、「すでに病気の診断基準を満たしているので直ぐに治療を始めてくださいね」というメッセージに変更されたのです。本当に日本国民の健康を守ろうという意識があるのか、はなはだ疑問に感じますが、医療経済学的な観点から考えれば、致し方ないのかもしれません。

表2 全国健康保険協会ホーム> 健診・保健指導>【重要】健診・保健指導のお知らせ> 重症化予防事業のお知らせ>
未治療者の方への受診勧奨(重症化予防事業)を実施しています  https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g4/cat405/sbb4052/info251031/

 当院の高血圧症に対する認識は、高血圧症は血管の老化現象の始まりであり、未病を治す漢方医学から見れば瘀血(オケツ)の結果であり、医科学的には血管に対する慢性炎症のクスブリが進行しつつある状態と考えます。
 だからこそ、できるだけ早く漢方薬と食生活の見直しによって瘀血状態を改善し、血管の慢性炎症を鎮静化することが、血管を若々しく保ち老化を遅らせるために大切だと考えます。
 当院では、自宅血圧測定を重要な判断指標として、従来通りの基準:140/90(I度高血圧)での治療をお勧めしています。

 当院の高血圧症に対する治療は、まず動脈硬化を防ぐ食生活指導と自宅血圧測定、「高値血圧」の基準で漢方薬治療開始、Ⅰ度高血圧を確認して、臓器保護作用のあるARB降圧薬の1/4量から1/2量での治療開始、必要に応じて塩分排泄と心血管系慢性炎症性繊維化を防ぐためのMRB降圧薬追加、降圧効果が不充分の場合にCCB降圧薬併用など、 毎月の自宅血圧を確認し、季節変動にも配慮しながら、常に適切な薬の量を調整しながら、血管や臓器の老化予防を視野に入れた治療を、①から⑤まで順を追って行ってきました。これからもこの方針は変わりません。

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